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診療報酬のマイナス改定でのコスト削減方法


株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 


 今回の診療報酬の改定では、3.16%という過去最大のマイナス改定となる。平成17年6月の病院運営実態調査報告では一般病院の67.4%が赤字病院であった。その開設者別では自治体の88.6%、その他公的病院の44.5%、私的病院でも43.2%が赤字であった。今回のマイナス改定はこれらの病院を直撃し、将来の建替え、改築への準備をも困難にする。
従って今回の改定では、コスト削減が病院経営にとって重要な短期経営課題になるものと考えられる。また今回の改定では、在院日数の短縮を促進させる改定が盛り込まれ患者の奪い合いがより一層厳しさを増すこととなる。
過去10年、60床〜1200床の大学病院、公立病院、公的病院、私的病院に於いて、200件近くの医療機関で経営改善に関わってきた中で、今回のマイナス改定がどの程度のインパクトを及ぼすのかと、その回避のためのコスト削減策のポイントを示してみたい。
1,000床規模の都内の大学病院では8億円程度の減収、地方大学病院では3億円程度の減収と予測している。公的病院でも600床規模の病院では2億円程度の減収、私的病院の300床規模では1億円以上の減収と推測されている。

1、薬剤のコスト削減方法
 サイプレスのデータベースで検索してみると、国立大学病院と自治体立大学病院での薬剤全体の値引率は6.1%〜8.2%となっている。私立大学のそれは9.1%となっており、大学間での格差は年間にして数千万円の利益の違いとなっている。さて私的病院での薬剤全体の値引率は11.2%〜17.1%までと大きく異なる。病床規模別に見てみると総じて大規模病院での値引率が低く、小規模になるほど値引率が高くなっている。
通常、病院は薬卸に対して価格交渉を実施し、値引を確保しようとしているが、これは効果的な方法ではない。薬卸であるスズケンの平成17年3月度の営業利益は0.9%で経常利益でも1.8%である。総じて薬卸の営業利益率は1%以下である。反して薬メーカーである武田薬品の営業利益は34.3%であり、経常利益は39.4%である。さらに外資系薬メーカーであるグラクソ・スミスクラインの2005年第一四半期営業利益は34.7%であった。またファイザーの同時期の税引き後の純利益率(Net Income %)は20.1%と高い利益率である。この卸とメーカーの利益率の差はあまりにも大きい。従って価格交渉を卸と行って得られる値引率は僅かであり、メーカーからの価格交渉の機会を得るようにしなければならない。
通常院内では同種同効薬で複数のメーカー薬が採用されており、患者の状況に応じて、同じ疾病分類患者でも、使われる薬も使用期間も異なっている。大学病院でさえも診療科が異なれば使用薬剤は異なっているのが現状である。そこで例えば、抗生剤の使用ガイドラインを院内で作成し、そのガイドラインに則った使用がされるように徹底する。これにより、投与量、日数、使用薬剤の標準化が実現できると同時に、コストも削減でき、患者負担も削減できる。同様にH2受容体拮抗薬、アルブミン使用、ACE阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、プロトンポンプ阻害剤などを見直すことで大きな経費削減となる。またジェネリックへの切り替えではさらに大きな削減が可能である。今回の改定ではジェネリック薬を持つ先発薬では大きな薬価の引き下げとなり、ジェネリックへの検討は必須となる。200床規模で数億円、1,000床規模の大学病院では20億円以上の薬剤を購入しており、これらの取り組みを実施した数十の病院事例では少なくとも数千万円規模以上の経費削減が実現できている。
また薬剤の在庫管理では、卸業者の配送頻度が向上しており、最も在庫日数の短い病院では4.5日となっている。特に金額の高い注射薬の在庫数の管理を徹底すると効果が高い。

2、医療材料のコスト削減方法
 医療材料の削減では償還される医療材料とされない医療材料があるが、総じて償還される医療材料は高額で購入されている。弊社のデータベースからその購入金額の状況を調べてみると国立大学病院では償還される医療材料の値引率は6.1%〜11.1%となっている。消費税と院内での事務経費を考慮すると、これらを購入して使用することは病院を赤字にするといっても過言ではない。
私立大学病院での値引率は8.2%〜26.3%となり、医療法人では13.4%〜40.1%となっている。購入量の多い大規模病院のほうが値引率がよいかというと実態はそうではない。データベースからいえることは200床以下の病院での値引率が最も高く、500床規模以上の国立大学病院の値引率が最も低い。
弊社のデータベースから急性期病院を15病院程度選び出し、年間の医療材料の購入総額のうち手術室で購入した材料の比率は40%〜46%である。またそのうち整形外科、心臓血管外科、脳外科及び内視鏡関係の医療材料を総計すると、手術室の医療材料の75%を越える。
また循環器内科での医療材料は償還される材料が多く、手術室と循環器内科の材料を加えた総額は医療材料購入総額の8割を示す。
これら15病院での年間購入品目数を調べると、3,800〜6,600品目であった。病院での材料マスター内に登録されている品目は6,000〜10,000品目程度あり、毎月新規の品目は60〜200品目追加されている。いかに医療現場では新製品あるいは規格の異なる製品導入が多いかが伺い知れる。
さて品目ごとに最も値引率の低い医療材料は5.0%で、最も値引率の高い医療材料は89.5%である。
現在、弊社のデータベースでは数万品目を株式会社ティエムシーのメディエを利用して422種類の製品群に分類し、実際の購入価格と値引率を比較している。
病院で年間購入金額の多い順に医療材料を並べると約600品目程度でその病院の購入医療材料総額の80%程度になる。上位100品目では全体の50%以上となる。従って上位100品目の購入医療材料を弊社のベンチマークデータベースと比較し、現状の使用材料における製品群の切り替えを実施することが最も経費削減に効果的となっている。
薬剤と同様に、医療機器卸の経常利益率は多くの場合に1%程度であり、卸業者を切り替えたとしても大きな値引率の変動は得られない。従って同機能の製品群で、他メーカー製品への切り替えを医師とともに検討し、メーカーに年間使用金額と数量を示し、切り替えを実施した場合に最も経費削減効果が高い。このような事例を医師に対して示すことが切り替えを促進する。
例えば、ある県立病院では数ヶ月間で約400万円の削減を実施し、200床以下のある私的病院では約180万円、大学病院では約3200万円の削減を実施した。
家電製品を含めあらゆる産業での価格情報は価格ドットコムのようにインターネットを通じて入手できるようになっているが、医療の分野では価格情報を簡単に入手できるようになっていない。そこで弊社ではこれらの情報を「ベンチマーク情報提供サービス」(http://www.kkcypress.co.jp/06/if_01bm.html)として提供するサービスを2004年から開始した。医療材料の情報提供では50件で10万円、医療機器保守や医療ガスなどの情報提供では3件で6万円としているが、このサービスを利用している医療機関では大きな経費削減を実現している。例えば、医療機器等の購入金額について、ベンチマーク価格を利用したことで、ある県立病院では約2,000万円の購入金額削減を実現できている。

3、医療機器の保守及び委託業務のコスト削減方法
医療機器の新規導入では購入時に見積りを入手し、メーカー間及び機種間の競争を実施している医療機関が多いが、弊社のデータベースからわかることは医療機器を購入した後の保守契約金額と消耗品等のランニングコストが高価なままになっている場合が非常に多い。機器購入時に保守契約内容と年間保守金額、ランニングに必要な消耗品の見積りを入手し、最低でも3社による5年程度の総経費比較を行なうことが必要である。
また医療機器本体の購入金額に保守費用を含めたリース契約は、保守金額の低減の余地をなくすため、得策とは考えられない。
また保守内容を精査すると、実際に医療機関で実施する保守業務内容及び時間と修理部品等が記載されている。これらを比較するといかに法外な保守金額が請求されているかがわかる。例えば近年、高機能化が著しいCTやMRIのような高額医療機器では保守費用が2000〜4500万円/年というのが典型的な例である。
以下に保守契約内容の見直しとして効果的なものを列挙する。
  ・CT
  ・MRI
  ・X線撮影装置
  ・内視鏡治療システム
  ・超音波診断装置
  ・超音波破砕装置
  ・生体情報モニター機器
  ・人工呼吸器
次に院内設備の保守では複数年契約を締結し、契約期間が終了した場合に自動更新している契約がほとんどである。契約終了時期の1ヶ月前から3ヶ月前に契約内容の変更意思を示し、条件変更を含めた価格交渉しない限り経費は削減されない。従って保守契約を単年度に変更できるものは変更する。契約書の保守業務内容及び時間と修理部品等が記載されている内容を比較すると、実際の業務内容が簡単な点検業務で済まされているにもかかわらず、高額な保守金額が請求されているかがわかる。
以下に見直しを実施すると効果的な経費削減になる保守契約を示す。
  ・エレベーター保守
  ・エスカレーター保守
  ・自動ドア保守
  ・冷暖房設備保守
  ・テレビ・冷蔵庫保守
  ・コピー機器保守
  ・駐車場設備保守
  ・情報機器保守
さらに人的サービスとして委託している業務でも複数年契約を締結し、契約期間が終了した際に自動更新している契約がほとんどである。契約内容の変更意思を示さない限り経費は毎年維持される。委託契約を単年度に変更し、契約内容の業務内容及び時間を毎月の業務報告書を基に精査する。また、これらの業務では患者にも直接関わるサービスが多く、業務内容の満足度調査結果を基に改善点を洗い出すことは委託業務サービスの質向上にも必要である。委託サービスでの患者満足度が非常に低かったある医療機関で、他院受診に患者が変えるリスクを算出した結果、年間1億円を超えていた。
以下に見直しを実施することで効果的な経費削減を実現できる委託契約を示す。
  ・給食委託
  ・寝具及び洗濯の委託
  ・院内清掃委託
  ・滅菌業務委託
  ・害虫駆除業務委託
  ・白衣及び洗濯の委託
  ・医事業務委託
  ・臨床検査業務委託
  ・院内配送業務委託(SPDを含む)
  ・受付及びメッセンジャー業務委託
  ・警備委託
以上のようにコスト削減活動を実施することにより今回の診療報酬マイナス改定での影響を緩和することができるものと考える。
ここで弊社のデータベースからランダムに20件ほどの医療機関を抽出してみたところ、図「コスト削減ポテンシャル金額:病床と医業経費の相関」の楕円で示したように病床規模に応じて医業経費が増加し、相関関係があることが確認できる。円の大きさはコスト削減ポテンシャル金額の大きさを示している。病床規模が大きくなるとコスト削減ポテンシャルが大きくなるわけではなく、コストマネージメントを実施している病院では、病床規模が大きくともコスト削減ポテンシャルはそう大きくならないことが判る。楕円から外れている2つの医療機関は一般病床の他に療養病床を有し、病床規模の割には医業経費が低いことがわかる。


また医業経費の規模とコスト削減実施金額の相関を取った、図「コスト削減実施金額と医業経費の相関」では、楕円内に位置する病院でのコスト削減活動期間は7ヶ月〜9ヶ月であり、医業経費の多い病院ではコスト削減金額も大きくなり相関があることがわかる。それぞれの円の大きさは病床規模である。楕円から外れた3つの病院でのコスト削減活動期間は3ヶ月〜5ヶ月であり、活動期間が短いと病床規模が大きくともコスト削減実施金額が総じて少ない。これは、コスト削減におけるノウハウの取得を病院職員が体験学習するまでは大きな削減金額とならないことを意味する。最初の3ヶ月〜4ヶ月で大きな削減効果が出ない場合には、院内での削減活動が衰退する危険性が必ずある。体験学習として、新たな発見を常に活動中に提供すると大きな削減金額となって表れてくる。従って活動期間が7ヶ月〜9ヶ月と長くなると、短期間である3ヶ月〜5ヶ月と比較して削減金額が大きく増加することになる。億円単位のコスト削減が実現できている医療機関が多数存在する。


2005年11月に弊社のデータベースの一部を用いて、10項目程度の経費調査に協力いただいた13医療機関におけるコスト削減ポテンシャル金額を算出した。13件での医業経費総計は1049億円であり、算出されたコスト削減ポテンシャルは年間換算で25億円となった。25億円は医業経費の約2.4%となる。今回の診療報酬改定で生じる医業収入減の影響を2.4%分コスト削減活動で対応できそうである。2006年も改定に苦しむ医療機関に対してデータベースの一部を利用した「コスト削減ポテンシャル 無料簡易診断」を提供することを検討している。

医学書院発行 「看護管理」 2006年4月10日発行より転載

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