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未来のDPC負け組病院の姿をみる


株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 


DPC包括制度が導入されてデータを提供している病院は240病院を超えた。また新たにデータの提供希望病院を含めると400病院にもなる。9000病院のうちの400病院と考えれば、たいしたことはないと思われるが、急性期病院の競争激化は、患者の奪い合いとなって予測される。
その多くの病院が現在20日以下の在院日数となっているが、数年以内に10日を切るようになるであろう。2倍の患者を獲得する病院と、奪われていく病院に分かれる時代である。
さて、同様の現象は1983年にDPC/PPSが導入されてから、病院の淘汰と病床数の減少となって現れた。そこで、負け組みのアメリカ・テキサス州にある公立病院の事例を紹介する。
1900年の開設から長い歴史を持つこの病院は、徐々に急性期医療を拡大するに従い増床し、ついに400床の病院となった。その病院は日本の再整備病院のように、大都市の中心からは少し離れた郊外に建てられた。
しかしながらDPC/PPSの導入と競争激化で、ついに5年前には170〜180床にダウンサイジングされた。競争激化のなかで人員削減、コスト削減が当然のように行われてきた。使わなくなった病棟は閉鎖した。
一部打開策として使わなくなった病棟を改築し、日帰り手術センターを開設。2年前には23の手術室数で年間6000件以上の日帰り手術を実施していた。手術件数をさらに増やすため、近隣の外科医の満足度改善に注力し、手術のスケジューリングを改善、体制を整えてきた。また、患者満足度は退院後2日以内に電話とメールで確認し、その改善に努力してきた。
地域への貢献として10の救急治療室に9人の医師を配置し、年間4万7000人の患者を受け入れる努力をしてきた。患者のプライバシー保護のため、声が漏れないように改築し、満足度の向上にも努力してきた。
さらに、この病院では40人の臨床薬剤師を配置し、治療に最適な薬剤情報の提供を積極的に展開し、この地区ではもっともサービルレベルの高い病院として有名であった。
院内の脳外科は人員不足で、救急患者は他院に送られることが多く、循環器内科、心臓血管外科も他の病院のほうが強くなっていた。整形外科と外科は病院の看板として存在していたが、手術件数に大きな変化はなかった。内科は多くの患者を治療していたが、科としては赤字であった。
ここ数年間は病床利用率も改善されず、ついには120〜150床程度の利用となり、赤字額も徐々に増加した。そこで経営陣は100人に及ぶ人員削減案を検討したが、受け入れられず、院長、副院長、財務担当役員に当るCEO、COO、CFOの解任が昨年決定した。2005年1月より新たにCEO、COO、CFOを院外からと院内の昇格で任命し、改革を推進することとなった。
前後して、この病院と1kmと離れていない場所に、民間の新設急性期病院が開設されたことに伴い、病院と契約していた医師がこの競合病院でも診療するようになり、患者は徐々に奪われていった。
これらの医師は新設病院の施設および設備が、この病院よりも優れているがために、患者の治療を他院で行っていると答えている。
しかしながら、臨床薬剤師のサービスを含め、この病院の運営システムで優れているものも多く、多くの医師はこの病院でも診療をつづけている。従って医療の質での差別化は困難となってきた。
新任のCEOは職員全員に当面、大きな人員削減はしない旨を伝え、赤字の原因を探るために、情報部門の責任者CIOに分析を依頼してきたが、明確な分析結果が得られなかった。
そこで他院からヘッドハンティングした新たなCIOを獲得し、分析を指示した。その結果、内科の主な診療で赤字となっていることが判明し、その改善を急いでいる。
また医師たちの不満の原因を探るために毎週、医師と面談した結果、麻酔不足により手術が予定通りにできず、他院で手術を実施していることが判ったため、2人の麻酔医を採用した。さらなる患者と医師の満足度向上のため、専任者に原因の分析と改善を支持した。
さて、あなたならどのような手を打ち、打開するであろうか。このような状況が近い将来に日本のあちこちで起きる可能性があるものと思われる。

株式会社日本医療企画 発行 「Phase3」 2005年8月号より転載

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